北川やすとし 兵庫県議会議員 六期

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活動リポート

2019.12.31

“人質司法”の是正へ 問題点の追求を ヒューマン・ライツ・ウォッチ 土井香苗・日本代表と意見交換

世界最大級の人権NGOで、正確な調査と公正で客観的な報告書による政策提言で高い評価を受けているヒューマン・ライツ・ウォッチ。1997年には地雷禁止国際キャンペーンの参加団体のひとつとしてノーベル平和賞を受賞しています。
今回、そのアジア局で日本代表を務める弁護士の土井香苗氏と日本の司法問題で意見交換しました。

「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」
1978年に設立された、米国に本部を置く国際人権組織のNGO(非政府組織)。法律家や学者、ジャーナリストなど約400人のスタッフで構成され、「調べる・知らせる・世界を変える」を手法に世界90ヶ国で人権擁護活動を展開している。ビジネスや女性の権利、保健・衛生などの分野で現状を明らかにした報告書を年100本以上発表しており、世界中の人権侵害をなくし、加害者に法の裁きをかけるという目標を打ち立てて活動している。
(※以下、敬称略)

ゴーン前会長取り調べで日本の闇が世界に〜国際社会から厳しい批判

【北川】昨年1月、会社法の特別背任罪などで起訴された日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン氏が取り調べなどで不当な扱いを受けていると、妻のキャロルさんが国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)に日本の司法制度を批判する書簡を送ったと報じられました。

勾留期間を引き延ばして弁護士不在で何日も尋問し、精神的苦痛を与えて自白を引き出そうとする日本の〝人質司法〞について、HRWは上位の調査対象として注目していると聞きます。

【土井】世界の基準から見ると、日本の人権状況は悪くなく、比較的良い国だと言えます。一方で、世界と比べて問題が大きいと思われる部分がいくつかあり、その一つに刑事司法制度の中の人権状況が挙げられます。

特に、カルロス・ゴーン氏の取り調べで見られた〝人質司法〞は海外のメディアで驚きとともに発信され、世界の人が日本の刑事司法の問題点を知ることになりました。

【北川】ただ、日本のメディアは表面的な報道だけで、こうした闇の部分を追及していこうとする動きが見られなかったのは残念です。

〝人質司法〞のような日本の代用監獄制度(留置場を監獄に代用すること)は、何年も前から国連の拷問禁止委員会に是正を勧告されており、国際社会から厳しい批判にさらされていますが、日本政府は正当性や必要性を繰り返すばかりで、マスコミも沈黙を守っているという状況は、異常事態と言わざるを得ません。

外圧が影響する仕組みを〜あらゆる手段で改善促す

【土井】問題点の一つに、日本は外圧(外部からの強い干渉)が効果を発揮する仕組みが弱いという構造があります。諸外国では国内人権機関のような、世界的な人権基準を内政に取り込んでいく独立した機関を持っており、これがイニシアティブをとって外圧の影響力を強くしています。

しかし、日本にはありません。国際的な意見や要請を法制化する仕組みがまったくなく、そのための手段は政治的圧力しかないというのが現状です。刑事司法改革への国民の意識が低く、メディアも政治家も関心がないという状況では、国際的なメッセージを国民が理解して制度化するのは極めて困難です。

まさに一歩いっぽ階段を登っていくしかなく、あらゆる手段を講じて改善を促していくしかありません。

リスク伴い困難な司法改革〜人権救済の第三者機関を

【北川】日本の国民は警察は正しいという先入観が強く、取り調べを受けた時点で被疑者は犯人だと決めつけてしまう風潮がある。また、袴田事件や誤認逮捕された村木厚子元厚労省事務次官の件などで、メディアや国民から捜査機関を非難する動きが起きないのも疑問です。

【土井】政治家からすれば、警察や検察の改革は難しく、逆に圧力をかけられる可能性があるというリスクも伴います。また、一般の国民には被疑者に共鳴する理由が基本的になく、正しく理解することが困難なのは仕方のないことと言えます。

過去の歴史を紐解くと、諸外国の多くが混乱の中でも人権について考え、状況をよくしていこうと努めて問題点を改善してきました。これは日本でもできることで、各国の成功例を研究して日本の構造に合うようアレンジし、適用していければと考えています。

【北川】捜査権力の濫用を防ぐためにも、人権救済の駆け込み寺となる国内人権機関や米国の「イノセンス・プロジェクト」といった第三者機関が不可欠です。また、HRWが日本の司法制度について調査を開始していると聞いていますが、進ちょく状況をうかがいます。

【土井】今回の調査では、事件について否認や黙秘した当事者から当時の経験を聞き取ることから始めています。

日本の刑事司法で被疑者はどんな経験をするのかという事実を明らかにし、報告書としてとりまとめるとともに、政府はどういう政策を打つべきなのかを提言していく方針です。報告書は英語でも発表し、世界に発信することで国際社会が日本の司法の現状や問題点を理解する手立てになればと期待しています。

投稿者:北川 やすとし


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