北川やすとし 兵庫県議会議員 六期

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活動リポート

2024.3.14

冤罪を防げ 活動家に聞く

過日、冤罪被害に遭われた山岸忍氏とリモートにて対談いたしました。
また、オブザーバーとして弁護士の秋田真志先生に同席いただきました。

<山岸忍氏略歴>
(株)日経プレステージ(現・プレサンスコーポレーション)を創業し、代表取締役に就任。
2019年、大阪地検特捜部に業務上横領容疑で逮捕されるが一貫して無罪を主張し、2021年に大阪地裁から無罪を言い渡され、確定した。
客観的証拠を軽視して見立てに固執した取り調べや起訴内容が注目され、村木厚子さん事件以来の重大冤罪事件となった。
2022年、取り調べた大阪地検の検察官2人を刑事告発し、国家賠償請求訴訟を提起している。現在、ツクヨミホールディングス代表取締役社長。

北川:
山岸さんは、冤罪が確定した後、取り調べを受けた大阪地検の検察官2人を刑事告発しました。しかし嫌疑不十分で不起訴処分となり、これを不当だとして審査を申し立てましたが、審査会も不起訴相当として議決するに至っています。

また、違法な取り調べとして刑事裁判を求めた「付審判請求」は2023年3月末で退けられ、現在はこれを不服として抗告しています。

この山岸さんの冤罪事件とその後の訴訟を通じて、メディアは冤罪被害に苦しむ人たちが存在することを広く正しく報じる姿勢が求められますが、実際はそうなっていません。

山岸:
冤罪確定後、なぜ冤罪が生まれたかを質す活動を展開しているが、それを積極的に取り上げてくれるのは一部のメディアに過ぎないのが現状です。

北川:
大阪地検が山岸さんを起訴した時は物々しく報道されたが、冤罪が確定し、次は山岸さんが大阪地検の検察官を告発した際のメディアの反応はとても薄かった。そこに、冤罪防止や冤罪被害の名誉回復に対するメディアの姿勢が表れています。

山岸:
逮捕、起訴後に勾留され、1日7~8時間もの取り調べを受けていたため、世間のニュースを把握する術はなく、後日に知人から当時の報道規模や内容を知ることができました。

皆が口をそろえて言うのは、逮捕、起訴された際は大々的に報道されたが、無罪後の訴訟については記事の扱いが小さいということです。私自身、日本のメディアはそんなものだという印象があります。

北川:
メディアと司法の隠れたつながり、司法への忖度が見え隠れするように感じます。こうした事案は積極的に問題提起していかねば是正に至りません。

北川:
本県では公益社団法人「ひょうご被害者支援センター」を設置し、犯罪で被害にあった人の総合的なサポートを行っていますが、冤罪被害者は犯罪被害者として認識されていないのが現状です。本来は公機関である同センターが関わってこそ、冤罪の減少につながるのではないでしょうか。

山岸:
検察庁は国の機関で、国はそれを守ろうとする一方、冤罪防止や冤罪被害者へのサポートに十分な配慮が及んでいません。結果、一般財団法人イノセンス・プロジェクト・ジャパン(えん罪救済センター)のような、志しのある民間団体が担うことになる。

こうした現状では、戦える能力のある人材が司法の構造を変えていくために働きかけていくことが必要になります。

北川:
同感です。検察庁や都道府県警察は本来、国民を守る組織でなければならないが、冤罪を生み出すマイナス要因もはらんでいることは矛盾していると言えます。

山岸:
特捜部検察官の場合、自分たちの保身と功名心しか考えていないと実感しました。それだけを見ても、国が冤罪被害者を支援する動きが活発になるとは思えません。

北川:
事件の記録は被害者、加害者の状況を把握・分析するために極めて重要な価値があり、また、冤罪を立証する記録も含まれている可能性があるため、神戸連続児童殺傷事件の記録を家庭裁判所が破棄していた問題などはあってはならないことです。裁判所には厳粛に受け止めて改善に努めていただくことを望んでいます。

また、裁判では検察官と被告人・弁護人が対等に争うため、捜査機関が集めた検察官の手持ち証拠をあらかじめ被告人側に見せる証拠開示の仕組みがありますが、実際には部分開示に留まり、被告人に有利な証拠が隠されていても被告人や弁護人は知り得ないという状況があります。冤罪を防ぐためにも、証拠の全面開示が必要ではないでしょうか。

秋田:
刑事訴訟法に「刑事記録(刑事事件の証拠)の目的外使用の禁止」があり、刑事記録は刑事裁判でしか表に出せないという規制があるため、密室の取調室で脅迫行為をするという権力犯罪が起こっても、それを明らかにする制度が存在しないのが現状です。

山岸さんは今回、取り調べの違法性を訴えて国賠訴訟し、それを立証するために、被告の国に対し、取り調べ中の録音・録画データを提出するよう求めました。取り調べの可視化は権力犯罪を監視するためにあるべきもので、証拠としてオープンにされるべきものですが、かなり迂遠な手続きを経なければ開示されないという制度的な欠陥があると多くの人に理解してもらいたいです。

国賠訴訟で国は、録音・録画媒体を提出することに強く抵抗しており、自分たちの恥ずかしい部分(恫喝など)は国民の目にふれさせないようにしている意図が明らかです。今回、裁判所が国に開示を求めたのは画期的なことです。

山岸:
今回の冤罪事件がなぜ起こったのか。それは取り調べで強引に元部下の供述を曲げさせたことが原因です。取り調べの違法性を問う裁判では、その録音・録画内容を証拠として使うのは当然のこと。それを拒むことは理解に苦しみます。

北川:
こうした司法やメディアの問題点は、議会活動の中でしっかりと発信していくことにしています。これらの活動を通じて、冤罪が発生する仕組みや被害の深刻さをより多くの人に認識してもらい、冤罪被害を防止する運動をさらに広げていきます。

投稿者:北川 やすとし


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