さる12月22日、公益社団法人ひょうご被害者支援センターの岩井理事とオンラインで対談しましたので、その内容を公開いたします。
<岩井圭司氏>
公益社団法人ひょうご被害者支援センター理事、兵庫教育大学教授、精神科医、臨床心理士。
犯罪被害者の支援を中心に、心的外傷(トラウマ)関連病態の臨床と研究に取り組んでいる。
北川泰寿県議(以下、北川):
活動について教えて下さい。
岩井圭司理事(以下、岩井):
犯罪被害者は警察や検察の取り調べで証拠品として扱われ、犯人を捕まえるためには被害者の人権を多少傷つけても仕方がないという考えが根強くあります。それを是正し、傷ついた被害者をサポートしていくこと、そして世間に生じがちな“被害者にも落ち度がある”という根拠のない風評から被害者を守ることが主な活動です。
北川:
日本の被害者支援は他国と比べ遅れが指摘され、活動も広がりにくいと言われています。
岩井:
心理学に「公正世界信念」という言葉がありますが、これは正義は報われ悪は罰せられるという思い込みの世界観です。実際には誰にも理不尽なことが起こるが、その際には公正世界信念が揺らぎ、当事者や周囲が「ひょっとしたら被害者にも責任があるのかもしれない」と考え出します。
そうした心理につけ込み、一部のマスコミは被害者のプライベートをさらして耳目を集め、被疑者についても事件が起こった状況などは考慮せずに「悪」というレッテルを貼って“悪魔化”します。この型にはめた報道はまさに人権侵害であり、被疑者と被害者双方を孤立無援の状況に追い込み、ときに冤罪を招く要因にもなります。日本の場合、大手メディアがそれに加担しており、国際的に見て状況が悪い。
被害者支援では、そうした世間の風潮を正すアプローチが力不足で課題となっています。
北川:
原告・被告の訴訟代理人を担う弁護士の側で人権擁護意識は高まっていますか。
岩井:
日本弁護士連合会では長年、被疑者の人権擁護を徹底する一方、被害者については被疑者の人権侵害をより拡大するという懸念から人権保護を唱えることを避けてきた側面もあります。
北川:
検察の先入観に基づいた意図的な捜査、マスコミの偏向報道などで被害者が孤立無援となり、世間からの隔離や不安定な精神状態で暗に加害者として追い込まれるケースがあるのではないでしょうか。
岩井:
裁判で精神鑑定を担うと、一人の中に加害者性と被害者性が混じっていることが見られます。虐待事件に多く、DVを受けて恐怖心が生じ、パートナーが自分の子どもを殺してしまうことを阻止できなかったとして訴追されるケースも被害者性を帯びています。被疑者、被害者に二極化することは危険で、立体的な人権擁護の視点が不可欠です。
北川:
取り調べ段階で臨床心理士や精神科医の支援が必要です。
岩井:
警察や検察には虚偽自白という発想がない。強圧的な捜査をすれば無実の人でもやっていないことを自白してしまうという考え方が希薄で、近年は警察庁の通達で各都道府県の警察学校で虚偽自白についての授業を入れています。
<追記>
精神医学の面からも犯罪被害者の支援は必要です。そのためには検察や警察はもちろんのこと、マスコミにおいても思い込みでことを判断しないことが求められていると考えます。
冤罪撲滅の活動は、引き続きこれからも続けて参ります。