昨日、12月6日に開催された西村やすとし先生の「経済外交勉強会」に出席しました。
「人民元の今後:相場見通しと国際化」というテーマで、元京都大学国際交流センター教授で龍谷大学の村瀬哲司教授と、母校甲南大学経営学部の杉田俊明教授が講演されました。
以下はその講演の要旨です。
世界経済の動向
・ 2008年~世界金融危機と世界不況:先進国経済(日米欧)の不況は長引き、先行き不透明。
その中で中国は発言力を拡大 (GDP、貿易量は米国に次ぎ世界第2位)。
・人民元の対ドル相場は緩やかに上昇するが貿易黒字は継続。米国の対中圧力継続。
・2010年6月中国は通貨バスケットを参考にする管理変動相場制の運用を再開。
今回は通貨バスケット(ドル、ユーロ、円など)を強く意識して上下両方向に相場を操作。
・対ドル相場は6月から11月までに2.5% (年率5%)上昇。
・基本認識:米中の利害は 「米ドルの急落回避」の点で一致。
オバマ政権は、戦後最悪の失業率を背景に、5年間輸出倍増計画実現のため、
緩やかなドル下落を希望している (人民元など主要貿易相手国通貨の上昇を希望)。
人民元の国際化について
・2009年(世界金融危機のさなか)それまでの消極路線を180度変えて、国際化路線に踏み切った。
目的は中国経済の過度のドル依存(経済大国・通貨小国)からの脱却。
・国際化とは、最終的に人民元を広く世界で自由に保有・使用させること。
・貿易の人民元決済を奨励。(09年7月~10年9月末累計1971 億元、貿易総額の2%)
・ただし人民元がドル、2020年までにユーロ、円、ポンドなみに国際化するかは疑問。
・ある通貨がどのくらい国際的に使われるかは、以下の3条件による。
1)その通貨の発行国が均衡のとれた国力を保ち、国際的に信用されること(将来○)
2)その通貨の取引について規制が少なく自由に使えること(将来×?)
3)その通貨のための大きく、流動的かつ自由な金融市場が存在すること(将来○)
・通貨に対する規制の問題は、中国の政治体制と密接に絡んでいる。中国政府の体質
に内包される管理・統制志向の遺伝子を入れ替えられるか。
なお、杉田教授は下記のサイトで、中国ビジネスの経営環境と経営戦略についてコラムを掲載されています。
現代の日本企業は、中国の動向にも注意を払い、柔軟に対応できる戦略が求められています。